モノ記 05.5

audio-technica ポータブルヘッドホン ATH-ES3 BK

audio-technica ポータブルヘッドホン ATH-ES3 BK

この子、外部音の遮音性は相当低く、飲食店などではまわりの音は、結構、聞こえまくりである。
 このあたりの欠点は、特に音の数の多い音源で顕著であるが、逆に、独奏曲などでは、そこまで外部音の邪魔が目立たない。そこで、それを上手く利用した、でもないけど、工夫した音楽の聴き方ってものがあるな、と思いついた。


 例えば、このヘッドホンでとても気持ちよく聴ける、『ダウランド:リュート集』などの音源を、あまりボリュームを上げずにかけて、外部音よりははっきりと聞こえる、という程度で聴くようにする。そうすると、ヘッドホンからの音というよりも、環境音の中の一つの音として、聞こえて来ないでもない。
 つまり、ヘッドホンの閉じた世界の中で音楽を楽しもう、というのではなく、自分にだけ分かるように音環境に関与して、環境音を上手く楽しめるように、耳に入る音を工夫・構築するのである。


 これを上手く使えば、耳の過剰集中に対する、ひとつのセラピーにもなり得るかもしれない。環境音の中に、自分の聴きたい音をさりげなく紛れ込ませ、そこに限定して注意を向け、同時に他の音を「聴かない」訓練をする。忍び込ませる音は自分の好きなものを設定出来るから、単純にありのままの音でその訓練をするより、飽きることも、うんざりしてしまうことも、少なくてすみそうである。