ATH-AD900 経過の1 及び雑感

AD900、使ってるうちに高音のサリっとしたのが取れてきて、やっぱりエージングが悪かったんじゃないの?と、疑いが消えない。
 Transcend MP320で聴くと、やっぱり高音はより自然に出るようになっている。しかしこちらの場合、低音のビットの低さというかレプリカ感というかもよく見えるようになってきて、ペンキで無理に塗りつぶしたような、毛穴が全部塞がれてしまったみたいな不快さがある。


 SE-U55SXのヘッドホン端子では、多少の粗さはあるものの、CD-WALKMAN D-E990のデジタル端子から繋いで聴いていると、結構悪くない感じで聴ける。ラジオノイズも、デジタル入力モードが一番少ない…というか一番無害な聞こえ方のノイズになっている。
 ヘッドホン装着、再生を始めてすぐは、「やっぱりあれ?」とか感じるが(特にやっぱり高音が気になり、金属の残響がシャリリとなり、高音にわずかにサラサラと細かいやすりをかけたような感じになる)、聴いてるうちに慣れて気にならなくなってくる。USB+ASIOでは、情報量が多いのが、却って仇になってしまってるのかも知れない。


 このヘッドホン、まだ十全に性能を発揮させてやれて無いが、今の時点でも、「聴き疲れのなさ」については、ホンモノだな、と思う。音源からのアウトプットからの音の粗さだとか、残らずさらけ出させてしまいはするものの、それでも、1時間2時間続けて聴いても平気で、耳に余計に疲れを残すような音は決して出してこない(今のところ)。低音が暴れたり圧迫感があったりしないのも、かなりいい。
 非常にあっさりしているので、この道具が特別に素晴らしい体験をくれているか、というと、もしかしてそんなことは無いのかもしれない。しかし、このヘッドホンの定価30,000円+税、実売18,000円くらいという値段が高いか安いか、というのは、人それぞれの求めるものによって当然代わりはするのだろうが、私自身は、適正価格、もしくは十分に安い買い物だと思う。
 考えてみれば、こんなヘンな機械を頭に乗っけて、そこそこの再生装置を用意して、スイッチオンするだけで、音楽を「フツーに」、殆ど何も我慢することなく楽しめる、というのは、我々の現実感覚か麻痺しているせいで気付きにくいだけで、実は結構すごいことなのだと、反省させられる。
 何時でもフツーに音楽が聴けて、フツーにコンテンツを堪能出来る。粗製濫造の安物があふれる中で、実際に知覚のほうも麻痺しているのだろう、そういう中で、そうしたただの「フツー」を実現することにも、本当はそれなりのコストがかかって当たり前なのだ、ということを、このヘッドホンを使ってみてあらためて思う。ちょっと強引なまとめかたをすると、好きな音楽がフツーに聴ける、というのは、とても贅沢なのだね。
 そう考えて、定価30,000、実売18,000、安くもなく高くもなく、やっぱり適正価格。中古とはいえ10,000で手に入れてしまったのが、何か申し訳ない。
 

 このヘッドホンでは今のところ、あまり数を聴いていないが、私の好きなピリオド楽器アンサンブルには、とても向いているようで、その点はかなり好感が持てる。特にこれなど。

バッハ/ブランデンブルク協奏曲<全曲>

バッハ/ブランデンブルク協奏曲<全曲>

こうなると俄然欲しくなってきてしまったのがこちら。
バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲

バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲

Cello Suites

Cello Suites

Violoncello da Spalla、肩のビオロンチェロによるバッハ無伴奏。低音が過剰に膨らまず聴きやすく、ぜひこのヘッドホンで鳴らしてみたい。


 案外良かったのが、打ち込みやロック(ハードでないもの)で、ヘッドホンであの辺を聴く何とも不幸な感じが、音場の広がりとともにオープンエアの向こう側へと拡散して消えていく感じ(?)が、とても好もしい。

SMOOCHY スムーチー

SMOOCHY スムーチー

Vespertine

Vespertine

なんかいっつも同じのばっかりで、芸がないなぁ、我ながら。