「は」行及び長音についての雑感

 Fを動詞語幹など語中の「わいうえお」にしてみた。つまり、旧仮名の語中の「は」行である。こうすると、打鍵数が増えてしまうが、語中音節での打鍵リズムは整う。また、「ぱ」行の促音や撥音にも当ててみた。こうすると、右手小指上段のPの使用が激減する。残っているのは擬音・擬態語と外来語の音訳だけだ。これは便利である。
 ものは使いよう、とも言えるのだけれども、しかし、「は」行をHにだけ対応させようとするのが、そもそも間違っているのである。「は」行音が、P>F>Hと変わって行ったというのは定説であるが、それだけでは半分しか事実を言い表していない。それは語頭での変化のことなのであって、語中ではFからWに変わった。また消えたPは、その後、漢語音の影響を受けて、促音や撥音という形で再び表れた。これをみて分かるように、語中での「は」行の進化は、その条件によって明確に発音が分かれ、重なることが無いので、それを反映してやりさえすれば、F一字が様々に使いうるのである。

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W=o:、L=u:、に加えて、Y=i: に設定してみた。
 W=o: としてみるて、感覚的に非常にすっきりするのだが、今ふと思い付いたのは、そういえば日本語の円唇母音は、厳密には「お」だけだから、円唇の半母音wと、母音としても子音としてもすっきり対応させられるのではないか、ということ。(むかし受けた大学の講義で見た、明治期だかの英語の仮名転写で「ハヲ メニ ラタ アー ザヤ?」を思い出した。)

 それにしても、音便の長音節を、短音節とは全く別の独立した音節として扱うと、ローマ字入力の際に、非常に頭の中がすっきりする。これは多分、かな入力や親指シフトにしてしまうと味わえないものだろう。(ちなみにローマ字打ちと言っても、最近音節がことさら意識される様になってからは、同指連打を除いて、音節単位のほぼ同時打鍵である。)
 福田恒存の『私の国語教室』を再び拾い読みしてみたら、「平安初期の音韻を表すための文字で、現代語音を過不足無く表現できると考える新仮名主義者はおかしい」旨のことを書いていたが、つまりはそういうことで、平仮名にはそもそも、漢字音導入以前の単音節主体の言語に特化された文字だったのであって、それより後に顕著になった長母音を表す機能は、備わっていない。
 しかし、今回やってみたように、独立した長母音字を当ててみると、現代日本語に於いて、長母音というのはただの2モーラ母音とは全く別の語意識をもっており、短母音とは違った扱いをする必要があるということが、とてもよくわかるのである。あるいは現代日本語というよりも、自分がこれまで聴き、使って来た言葉、という方が正しいかもしれない。
 仮名によってそれを表そうとするなら、長音節専用の仮名を新たに作らないのであれば、複母音字も許されない単音節文字である仮名では、語意識や長音化規則に照らせば、旧仮名の様にするのが最も良い方法だと思われる。(o:とouの区別が付く、eu/au/iu などの母音連続は動詞変化か複合語に限られる、etc...)