中谷美紀の

『砂の果実』という歌は、当初から「暗い」というのが一般的な受け取られ方だと思うが、あれは徒なネガティブさを含んだ自己否定の歌ではなくて、そう捉えられているとすれば、多分あの省略された歌詞がついたビデオクリップのせいだろうな。あれは「泣きたくなる」様な後悔の歌で、あまり素直な少年時代を過ごさなかった私の様な人間には、とてもよく分かる歌詞なのだよね。私などは、「僕のこと 誇りにしてるって つぶやいた声に泣きたくなる 今でも」のあたり、祖父のことなど思い出すと割とそういう気分になる。
坂本龍一とのコンビで『小さい秋見つけた』のアレンジがあったのを、最近まで知らなかった。これまた暗ァい所謂鬱アレンジなのだが、ただし教授の音の使い方はさすがで、ただの中谷のユーレイ声以上のものになっているのは凄い。もともとの歌詞もよく聞くと、「お部屋は北向き 曇りのガラス 虚ろな目の色 溶かしたミルク 僅かな隙から 秋の風」とか、子ども向けの歌ではないよなァ、とか思って、中谷のユーレイ声もやけに説得力が出てくるのだよな。
もともと童謡というのが、あまり子ども向けの視点からは書かれていない、と談志師匠、いわく「大人の贖罪」があるそうな。