読書メモ。『英仏百年戦争』
読了。
- 作者: 佐藤賢一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/11/14
- メディア: 新書
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英仏が百年間戦争していたのではなくて、フランス王家版南北朝が版図争いを続けるうち、英仏二つの王家、そして国民国家の原型が出来上がっていく、という記述。なるほど説得的に述べられていて、得心がいく。
著者は本書の最後で、このようにして出来上がってきた国民国家の枠組みも、出版当時の情勢としてヨーロッパ統合が進んでいて、この枠組みもそろそろ新しいパラダイムに置き換えられるはずである、といった趣旨のことを述べている。
が、その後のわずか数年で明らかになったのは、現在のユーロ危機や、これまでの少し奔放に過ぎた移民政策への反省、世界的な不況下での各国の保護経済的政策、そして資本原理主義を媒介としたグローバリズムの失敗と終焉などを経て、むしろ新たなナショナリズムの勃興を目にしているわけで。
もちろんかつての自国優位思想に基づくナショナリズムとは違って、集団文化的な統一性を、動かしがたい前提としてではなく、構造体の維持や国家間のバランスのための一つの方便としてとらえていく、という、質的な違いというものがあるわけであるが…。
ナオミ・クラインが明かすごとく、市場原理主義を媒介としたグローバリズムがぽしゃった原因が、その最も極端な実現方法が、理性と良識に基づくべき民主主義と根本から相容れないものであった、ということは、一つの希望ではある。
…と、本書と関係ない話についつい流れてしまった…。