文字起こしの力。

自分で文字起こししたり誰か他の人がやったものを見ていても、文字資料の力というのを改めて実感させられる。
動画で確認できる内容と同じ物をなぜわざわざ作るのか、といえば、同じ内容ならば、目的にあった形式を各自選べる方がいい。
では、文字にしたものに特有のメリットとは何か、端的に言えば、言語学の方面で「線条性の破壊」と呼ばれているやつ。
人間の音声言語の特徴である線条性、1次元性が壊れるというのはつまり、時間に沿って単線的にしか追いかけられないはずのものを、複線的、面的・点的という別の空間的次元での把握ができるということ、加えて、時間的次元においても、脱時間的、無時間的に読むことが可能…つまり、文字の組み合わせ=意味を一目で把握したり、前後を自由に行ったり来たりできるということ。
具体的には、

  • 視覚という無時間的な感覚モードにより、意味の把握にかかる時間がが劇的に短縮できる。
  • ある部分を注意して読みながら、目の方では続く内容を予め先取りすることができる
  • わかりづらかったところは立ち止まって読み返したり、どうでもいい場所を飛ばす事もできる。
  • 「意味のないやり取りが繰り返されている」というメタ情報を図形的に抽象しやすい。

など。



文字にすることは、例えばフォントを拡大したり色を塗ったり、という強調手段が、一見メリットに見えるが、これはむしろ「それを実行するものの主張」を表現しやすい、ということであって、文字というメディアの本質的な効果は、上記のことだろう。
時間的な形式に依存するものから、時間性を剥奪し、尚その意味内容は保存される。抽象の極み、まさに革命だ。