読書メモ

オリヴィエ・アラン『和声の歴史』。面白い。各時代の和声の発展の様子を、共時的記述の羅列で済ませることなく、その変化をもたらした契機・誘因までも含め、有機的に西洋音楽の和声が展開されていく様を、密度の濃い記述でまとめている、という感じ。多数の要素が複線的に絡み合う歴史の描き出されていくさまは、あたかも対位法的音楽が生み出され演奏されていくのを見ているように感じさせる・・・・・・とかなんとか言ってみるテスト。

翻訳は無駄のない良い訳文と感じる。原文をよく理解できてる感じで、おかしな日本語もほとんどなく、純粋に内容に集中できる割合が高い。・・・・・・のはいいのだが、一点、 おそらく原語は chromaticisme なのだと思うが、これを「半音階主義」と訳すのは、やっぱりどうかと思うわけで。半音音程に特に重要な意味を持たせて積極的に使うような作曲姿勢を示すのでもない限り、この chromaticisme はせいぜい「半音階使用」程度の意味しかないはずで、この点だけ、どうしても思考が乱されてしまう。

文庫クセジュ448 和声の歴史 (文庫クセジュ 448)

文庫クセジュ448 和声の歴史 (文庫クセジュ 448)