【文献引用】後位修飾を伴う特定の単数名詞に、不定冠詞 a(n)が伴う場合。: A guy that Harry didn't know was sitting there. ーDomonkos, Get Shorty
(過去記事 http://d.hatena.ne.jp/altocicada/20130912/1378914359 でも触れた点を再引用)
小西友七編『現代英語語法辞典』(三省堂)の the の項
しかし、ある名詞が談話の中で初めて言及される場合は、その名詞が1つしかない[1人しかいない]という特定性を表していても、関係詞の先行詞に a/an がつけられる:
A guy that Harry didn't know was sitting there. ーDomonkos, Get Shorty
安藤貞雄『現代英文法講義』第22章
22.1.1. 定冠詞の基本用法
定冠詞は、文脈または場面から聞き手にとって唯一的に同定可能 (uniquely identifiable) な事物について用いられる。言い替えれば、定冠詞の使用は、指示物が聞き手にとって旧情報 (old information)に属するという前提が話し手の側に存在する場合に限って可能になる、ということである。定冠詞のこの特徴は、<定性> [+def(initeness)] と呼ばれる。定性は、次のような場合に付与される。
[A] 先行の名詞を指す場合
〔例文略〕[B] 先行名詞の指示物から含意されるものを指す場合
〔例文略〕〔解説略〕
[C] 限定語句によって「唯一的に同定可能」になっている場合
(4) I am studying the life of Thomas Hardy.
(私はトマス・ハーディーの生涯の研究をしています)
(5) The letters on the desk are for you.
(デスクの上の手紙は、君宛のものです)
(6) John is the taller of the two.
(二人のうちでは、ジョンの方が背が高い)
これらの例で、名詞句に [ + def] が付与されているのは、後続する限定語句によって、つまり順行照応的 (cataphoric) に、それが「唯一的に同定可能な」なものにされたためである。しかし、限定語句を伴えば必ず the が付くと考えるのは、誤りである。たとえば、
(7) a. He is a teacher of this school.
(彼は学校の先生だ)
b. An orphan is a child whose parents are dead.
(孤児とは、両親をなくした子供のことである。)
の場合、限定語句を伴っていても、*the teacher, *the child にはならない(ただし「校長」は唯一的に同定可能なので、the principal of this school となる)。ただ一人に特定化されていないからである。つまり、先生も孤児院も一人ではなく、ほかにもごまんといからである。さらに、次の二つの文を考察せよ。
(8) a. The book I borrowed from John was very interesting.
b. A book I borrowed from John was very interesting.
(ジョンから借りた本は、とても面白かった)
(8a) は、私がジョンから借りた本は1冊であり、しかも、その本がどんな本であるか聞き手も知っている、と話し手が考えている場合に限って成立する文である。一方、(8b) では、私がジョンから借りた本は1冊とは限らないし、しかも、その本の存在を聞き手が知っていない場合の発言である。
最後に、(9)の二つの文を比較してみよう。
(9) a. literature that deals with our inner life
b. the literature that deals with our inner life (Christophersen 1939)
(9a, b) は、日本語ではともに「人間の内面生活を扱う文学」となるが、(9a) の無冠詞は、その種の
文学を一般的・総称的な表現としとらえているので [-def] であるのに対して、 (9b) に the が付いているのは、いま問題にしている、その種の特定の文学を考えているからである。
[D~J] 〔省略〕